ディズニー映画『Wish』の劇中歌「This Wish」に関するツッコミと考察(ネタバレあり)

はじめに

先日ディズニー映画の『Wish』を見に行きました。ディズニーのミュージカルは英語版が至高だという思想を持っているため、字幕で見ました。評判通りストーリーはちょっとアレでしたね、音楽はよかったんですが。。。特に劇中歌の「This wish」、曲は非常に良かったんですが、映画視聴中にあの曲が流れたとき、「本当にこの場面でこの曲をつかってよかったのか?」という疑問がうまれてしまい純粋に楽しめませんでした。他にもストーリーについては腑に落ちない点が多かったのですが、ネットでこんなうわさを耳にしました

Wishの当初のプロットでは、マグニフィコとアマヤが悪役で、アーシャはロサス郊外に住むレジスタンスのリーダーであった。その後なんやかんやあってスターの協力を得、魔法を使ってマグニフィコ&アマヤの圧政を討つ、というストーリーだった。けど情勢とかなんやかんやあったからプロットを変えざるを得なくなって現状のWishのプロットになった。

ソースもよくわかんないしうろ覚えなので微妙に間違っている気もしましたが大筋はこんな感じだったはず。この噂通りのプロット(このプロットを以下pre-Wishとします)だったら、割と「This Wish」の歌詞も不自然じゃないんじゃないか?とか思ったので『Wish』における「This Wish」の不自然な部分の紹介とともに、pre-Wishだった場合「This Wish」がどう解釈できそうかということについて述べていこうと思います。

そもそもpre-Wishの時点で『This Wish』は作詞/作曲されていたの?という疑問が残りますがその辺は本当に全く知りません。そうじゃない可能性も高そうな気がしますがなんにせよ話を進めていきます。なお、タイトルにもある通りWish本編のネタバレを含みます。

 

 

「This Wish」の歌詞について

Ariana DeBose - This Wish (From "Wish"/Lyric Video) - You

 www.youtube.com

 

全編においてツッコミどころはあるのですが大体同じような文句になりそうなのでいくつかピックアップして突っ込んだり考察したりしていきます。まず序盤のこのフレーズ

If I could show them everything I've seen
Open their eyes to all the lies then
Would they change their minds like I did?

"everything I've seen"これ、日本語に直すと「私か見てきたすべてのもの」だと思うんですが、そんなにアーシャってこの時点で大きなもの何か見てましたっけ?強いて言うなら禁断の魔法と保護されている美しい願いたちくらいじゃないでしょうか?でも文脈的には何か自分たちに不利で、悪いものをさしていそうです。劇中だと「マグニフィコ王が都合の悪い願いを叶えないという事実」のみのことをさしていそうですが、それを"everything I've seen"といってもいいんですかね(この辺は英語詳しくないので実のところはこのように表現しても悪くないのかもしれませんが)。

all the lies"全ての嘘(複数形)←これもさっきと同じで「マグニフィコ王が都合の悪い願いを叶えないという事実」のことしか指しませんよね(lieが単数だとeyes, their mindsと韻が踏めなくなるという問題はありますが)?いやそもそも劇中で確かにこのことを明示的に国民に伝えてはいませんでしたがこれは"lies"なんですか?

現状の歌詞だと「マグニフィコ王が都合の悪い願いを叶えないという事実」が本当に悪だったかどうかをこの際さておいても、少し不自然です。しかしこのように考えてみるとどうでしょうか。(以下私による勝手な考察です)

pre-Wishではマグニフィコ王(とアマヤ王妃。以下アマヤ王妃については省略)は国民を騙し願いと重い税を取り立て、悪政を敷く傍ら、私腹を肥やしていました。一方国民は王の政治に疑問を持たずに、苦しみながらもどうにか生活をしていました。そんななかでアーシャは、ひょんなことからマグニフィコ王が裏で私腹を肥やしている事実を知ります。そして、現状の我々の苦しい生活というのがマグニフィコ王による悪政のせいであることを確信します。

このように考えると"everything I've seen"及び"all the lies"というのが「マグニフィコ王による悪政の数々」であったと考えることができます。また、現状のWishのストーリーでは、サバの願いをかなえてもらえないと知ったアーシャによるわがままを大げさに言っているようなところが多いですが(ほかの人に言っても聞いてもらえない、ここは私のいるような場所ではない、など)、「マグニフィコ王が国民を誑かしていた」と考えるとより自然になりますね。

 

さて戻って、歌詞の他の部分も見てみましょう。サビで何度も繰り返されるパートです。

So I make this wish
To have something more for us than this

私の英語力がないのか、この"more for us than this"が何をさしているのか結局最後まであんまりわかりませんでした。しかし、pre-Wishにおいてマグニフィコ王による圧政と苦しい生活があった、と考えると現状の王による圧政を打ち破りたい、というニュアンスが出てきます。

次は曲調が少し変わってリズミカルになる部分における歌詞です。

I'm past dipping my toes in
But I'm not, no, I'm not past diving in

他の部分も気になりますが、特に気になったのがこの部分です."I'm past dipping my toes in"は足先を水にちょんちょん、とするように物事を試してみる、という意味だと思うのですが、劇中のこの時点でアーシャのやったことといえばマグニフィコ王や家族にちょっと駄々をこねたくらいです。"diving in"は水に飛び込むように大きなことをやるみたいな意味だと思います。この歌詞の前後も含め、このパートの歌詞は「いろいろできる範囲で頑張ったけど、やっぱりこのままじゃだめだ。大きいことをしよう、何をしよう」という意味だと思いますが、やっぱりWishの、この時点でのストーリーでは何を言っているのかよくわかりません。しかしpre-Wishでは以下のようなストーリーであったと考えるとどうでしょう。

アーシャは現状の政治に不満を持っていたため、法律の範囲内で、正式な手順によりマグニフィコ王による悪政を糾弾または改善しようとしていた。しかしながらアーシャの抵抗むなしく、マグニフィコ王による悪政はなにも変わることはなく、人々の生活は苦しいままであった。そして「This Wish」を歌い、決意をする。武力により革命を起こし、マグニフィコ王を討つことを。

こうであったと考えると"I'm past dipping my toes in"はいままでのアーシャによる王政への抵抗をさし"But I'm not, no, I'm not past diving in"は武力による革命をまだ行っていないということをさしていた、と考えることができます。関連して

I never knew I needed room to grow
Yeah, I did what I was told when someone told me, "No"
Now I've got all of this freedom in my bones
But I've still got the lid on so it doesn't overflow

この部分も今までは合法的な枠にとらわれていました、ということだったと解釈ができます。

おわりに

そもそもWishは劇場で一回しか見ていないし設定資料集も何も見たことがなく、記憶と聞きかじりの情報と「This Wish」の歌詞のみを根拠にしているのでたぶん的外れな部分はあるんだろうなーと思います。何か間違いもあるかも?しかし「This Wish」の歌詞はpre-Wishのための歌詞であった、と考えても(というかそちらのほうが)結構つじつまが合う、というところが多そうです。噂でしか耳にしたことのない改変前のWishですが、そのストーリーラインは、非常に面白そうなのでそっちのストーリーを見たかったなあ......